第五診


「お医者の腕の見せ所=患者さんとの二人三脚」

((会社員)
結局、やりたい事をやりたいようにやって、その分、体が苦しくなるのを我慢するのか、
体を楽に過ごさせるために、体と相談しながら、やりたい事をちょっとだけ我慢するのか、選んでいるのは自分自身ということなんだね・・・

(私)
まさしく大正解です。
そして、薬の組み立てを考えて、「どこまで、よけいな苦しさを感じることなく、
やりたい事の出来る活動の幅を広げられるか」が、お医者の腕の見せ所となります。
ですから、あなたの「過敏性腸症候群」のような、ずっと付き合う慢性的な病気の場合、
医者と患者さんの信頼と協力関係というのが治療効果に大きな影響を持ってきます。
常に変化し続ける体と環境の変化に対応して、その都度、お薬の組み立てを微調整し続け、また、自分の体の変化の癖を理解して、強い変化を起こさせない様に気をつける。
そして、残念ながらうまく対応できずに強い症状を呼んでしまった時には、短期に集中して強い薬を使って、早く苦しみをとりながら、生活のリズムを見直していただいて、早く元の安定な状態を取り戻す様にしていく。
という事が大事になります。

(会社員)
わかった。
今度からは、勝手な薬の飲み方の変更や中断はしないで、症状の変化について一々相談
しながらやっていく事にしていくことにするよ。

(私)
ご理解いただけて幸いです。
是非そうして行ってくださいね。
それで、あなたの場合、基本的に生活の中に生活時間の乱れとか、刺激の多い食べ物とか、腸の動きを刺激する要素が織り込まれていると考えられるため、お薬の組み立てとしては、腸の動きを安定させる整腸剤をベースに、腸の動きを軽く抑える下痢止め系の整腸剤を加えたものを長期に安定して飲み続けながら、その時の症状に合わせて、痛み止めや下剤を頓服で使っていく、というのが基本戦略になります。
それに加えて、仕事のストレスや不安、不眠傾向などの神経症状が募ってくると、整腸剤の組み合わせだけでは対応不能となりますので、抗不安剤などの神経をなだめる薬の追加も考慮していく必要が出てきます。

(会社員)
それそれ、やっぱり、締切が近くなって徹夜が2-3日も続くと、てきめんお腹に来るんだ!

(私)
やっと本音が出ましたね。
それでは、今回は、先ほど説明した整腸剤の組み合わせに加えて、神経の緊張を抑える薬を一種類追加して出しておきますね。

(会社員)
わかった。
今度はうまくいくといいな。


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