第三診


「お熱の時は、脱水症にご用心!」

(私)
ちょっとお子さんの腕を触ってみてください。
<お母さんに子供の二の腕をなでてもらう>
火照ったように熱いのに、すごくサラサラしていませんか?

(お母さん)
そう言われればそうですね。

(私)
人間というものは、汗で体温を調整するものなのに、これだけ熱があって、汗が出ていないというのは変だと思いませんか?
これは昨夜から熱が続いていたため、汗を出しつくしてしまって、それを補うための水分の補給が
間に合っていない事で、体の水分が不足する「脱水」を起こしてしまっているというサインなのです。
それで、「青菜に塩をかけたように」体に力が入らず、クテッとしてしまっているんです。

(お母さん)
水不足って、今朝もジュースを飲んだし、水ものは口にさせていますよ。

(私)
水ものを口にしているというのは、その通りでいいのですが、肝心なのは、どのくらいの量を飲ませたかなんですよ。
<女の子に向かって>
昨日のお熱が上がり始めてから、今までの半日でどのくらいの水分をとりましたか?

(女の子)
<150cc位のコップを持つ手真似をして>
うーん、この位のコップで二つか三つぐらい・・・

(私)
なるほど。
<お母さんに向きなおして>
今回のように、高い熱があって汗を一杯出さなければならないような時とか、お腹をこわして下痢をしているような時など、体の水分が外に逃げていきやすい時には、
体重15Kg位までの小児の場合、体重10Kgにつき、一日約1L
体重40Kg位までの児童から中学生の場合、体重15Kgにつき、一日約1L
体重40Kg以上の大人では、体重20Kgにつき、一日約1Lの水分が必要となります。
<問診票を見ながら>
今の体重が22Kgだから、この場合、最低一日約1.5Lの水分が必要となります。
で、実際取っている水分量が約500mlだから、圧倒的な水不足に落ちいっており、そのために体に力が入らなくてダルい状態にもなっているのです。
いま、点滴である程度の水分を補ってあげるので、ちょっとの間、元気になれるはずですが、それを使いつくしてしまえばまた「元の木阿弥」になってしまいます。
元気な間に、頑張って水分補給して、その元気を維持できるように努めてください。

(お母さん)
<ちょっと驚いて>
そんなにいっぱい飲ませなければだめなんですか?

(私)
多少多めに水分を摂らせたとしても、余りはおしっこになるだけですから、飲めるようなら積極的にどんどんとらせていただいて結構です。
実は、このおしっこがしっかり出せているというのも大事なことで、ばい菌やウイルスと免疫が戦った後に残る毒の物質とか、体力を維持するためにエネルギーを絞り出した後の老廃物とかを体の外に排出させて、体の中をきれいな状態に保つために不可欠なのです。

(お母さん)
そうなんだーー

(私)
確かに全体の量を一気飲みするとなると、大変な量ですが、一時間に一回程度、コップに一つずつ飲ませていると、朝から晩までかければ自然にそれくらいの量になるものです。
要は、切らさない様に常に水ものを口にさせ続ける事が肝心となります。
朝にポット一つ分のお湯を沸かして、寝るころにちょうど空になっていれば良い、という位の目安でやって頂ければいいと考えます。

(お母さん)
わかりました。やってみます。

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