(私) ちょっとお子さんの腕を触ってみてください。 <お母さんに子供の二の腕をなでてもらう> 火照ったように熱いのに、すごくサラサラしていませんか? (お母さん) そう言われればそうですね。 (私) 人間というものは、汗で体温を調整するものなのに、これだけ熱があって、汗が出ていないというのは変だと思いませんか? これは昨夜から熱が続いていたため、汗を出しつくしてしまって、それを補うための水分の補給が 間に合っていない事で、体の水分が不足する「脱水」を起こしてしまっているというサインなのです。 それで、「青菜に塩をかけたように」体に力が入らず、クテッとしてしまっているんです。 (お母さん) 水不足って、今朝もジュースを飲んだし、水ものは口にさせていますよ。 (私) 水ものを口にしているというのは、その通りでいいのですが、肝心なのは、どのくらいの量を飲ませたかなんですよ。 <女の子に向かって> 昨日のお熱が上がり始めてから、今までの半日でどのくらいの水分をとりましたか? (女の子) <150cc位のコップを持つ手真似をして> うーん、この位のコップで二つか三つぐらい・・・ (私) なるほど。 <お母さんに向きなおして> 今回のように、高い熱があって汗を一杯出さなければならないような時とか、お腹をこわして下痢をしているような時など、体の水分が外に逃げていきやすい時には、 体重15Kg位までの小児の場合、体重10Kgにつき、一日約1L 体重40Kg位までの児童から中学生の場合、体重15Kgにつき、一日約1L 体重40Kg以上の大人では、体重20Kgにつき、一日約1Lの水分が必要となります。 <問診票を見ながら> 今の体重が22Kgだから、この場合、最低一日約1.5Lの水分が必要となります。 で、実際取っている水分量が約500mlだから、圧倒的な水不足に落ちいっており、そのために体に力が入らなくてダルい状態にもなっているのです。 いま、点滴である程度の水分を補ってあげるので、ちょっとの間、元気になれるはずですが、それを使いつくしてしまえばまた「元の木阿弥」になってしまいます。 元気な間に、頑張って水分補給して、その元気を維持できるように努めてください。 (お母さん) <ちょっと驚いて> そんなにいっぱい飲ませなければだめなんですか? (私) 多少多めに水分を摂らせたとしても、余りはおしっこになるだけですから、飲めるようなら積極的にどんどんとらせていただいて結構です。 実は、このおしっこがしっかり出せているというのも大事なことで、ばい菌やウイルスと免疫が戦った後に残る毒の物質とか、体力を維持するためにエネルギーを絞り出した後の老廃物とかを体の外に排出させて、体の中をきれいな状態に保つために不可欠なのです。 (お母さん) そうなんだーー (私) 確かに全体の量を一気飲みするとなると、大変な量ですが、一時間に一回程度、コップに一つずつ飲ませていると、朝から晩までかければ自然にそれくらいの量になるものです。 要は、切らさない様に常に水ものを口にさせ続ける事が肝心となります。 朝にポット一つ分のお湯を沸かして、寝るころにちょうど空になっていれば良い、という位の目安でやって頂ければいいと考えます。 (お母さん) わかりました。やってみます。 |
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