第二診


「天然素材なら安全?」
(私)
まず、その「コラーゲン&コンドロイチン硫酸」を飲んでも、この中に入っている成分がそのまま関節に届いて、軟骨を丈夫にしてくれるわけではないのですよ。

(老婦人)
<鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして>
え!!軟骨の成分を飲んだら軟骨が丈夫になるはずでしょうが??

(私)
確かに、整形外科の先生方がやるように、関節の中に直接注射で入れるのなら、その成分が
直接的に関節の修復の役に立てるでしょう。
ただし、成分が同じでも、口から取るとなると話は別になります。

(老婦人)
なんだって??
同じ成分なんだから、同じ働きになるのではないの?

(私)
口から取るものには、消化の働きが加わります。
特に、たんぱくの成分を含むものは、そのままの形で体の中に入ってしまうとアレルギーなどの危険な反応を起こすものが多いため、必ずアミノ酸という細かい分子まで一度分解してから取り入れる事になっているのです。
たとえば、筋肉をつけようとして肉を一杯食べても、食べた豚肉や鶏肉が直接、胸や腕の筋肉になってくっつくわけではなく、消化の働きで肉を分解して出てきた豊富なアミノ酸を使って、自分の体で自分の筋肉を合成しているのです。
ですから、「コラーゲン&コンドロイチン硫酸」を飲むことで、栄養源として、軟骨の合成に必要な
アミノ酸の量を増やす事は出来るのですが、その成分が直接軟骨に届いているわけではないですし、その軟骨の合成に必要なアミノ酸の量を増やすという目的なら、もっと安上がりに焼き鳥の軟骨串を食べたって同じ事になるんです。

(老婦人)
えー、びっくりした。
<コラーゲン&コンドロイチン硫酸と書かれた瓶をまじまじと見ながら>
これが、焼き鳥の軟骨串と同じだってか??

(私)
口から取る栄養としては、そういうことになります。
<老婦人に瓶の成分表を指差して見てもらいながら>
つぎに、この成分表には確かに「天然由来のコラーゲン&コンドロイチン硫酸含有」と書かれて
いますが、その下に色々な添加物も入っていると書いてありますよね。
だから、副作用という意味では、これもほかの薬と同様だという事です。

(老婦人)
天然物と言うから信用したのに、混ぜ物が入っていたんでは、確かにほかの薬と一緒だー。

(私)
ちなみに、そもそも薬というものは、天然の毒の研究から始まっているのをご存知ですか?

(老婦人)
なんで、おっそろしい毒と薬が一緒になるんだ?

(私)
古代では、いろいろな毒を人が死なない程度に薄めて使うことで、それがどんな働きを及ぼすかを調べて、その中で役に立つ作用の見つかった物を薬として使っていたのです。
また。漢方で使う天然生薬というやつも、もともとはその植物が自分を虫に食べられにくくするために自分の中に蓄えた、毒の成分を上手に取り出して利用しているのです。

(老婦人)
そう言えば、山に生えてる「猛毒のトリカブト」が心臓の薬になってるって聞いた事ある。

(私)
そうです、そうです、それが漢方では附子(ぶし)と呼ばれる有名な生薬となり、西洋ではその中の
成分を取り出して、ジギタリスという有名な心臓の薬となります。
そのように薬というものは、何らかの狙った効果をあげられるように、もともと生き物が持っている、生命を維持する働きの一部を抑制したり、逆に刺激したりする物質のことで、どんな薬でも、多かれ少なかれ必ず、望まれていない作用、つまり副作用というものも付いて回るものなのです。
その作用が早く現れたり、大きな作用がある様に感じられる薬の事を、俗に「強い薬」と呼びますが、薬の強い弱いにかかわらず、また、それが合成品であれ天然由来の物であれ、薬としての作用を狙うかぎり、副作用に関しては全て同じという事になります。

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